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2019/2/12 手形上の責任について
手形上の責任について
Aは,平成14年4月1日,Bに対し,同年5月31日を満期日とする約束手形を振り出した。
Bは,同年4月10日,白地式裏書の方式で,この手形に裏書人(第1裏書人)として署名した上,Cに手 渡すべく,この手形をBの使用人Dに託した。
ところが,Dは,無断でこの手形の満期日の記載を 「平成14年6月30日」と書き換えた上,Cに手渡さないまま,同年6月10日,この手形に自ら裏書人(第2裏書人)として署名し,これをEに譲渡した。
Eは,平成14年7月1日,この手形を支払 のために呈示したが,Aによりその支払を拒絶された。
1 Eは,Bに対し,手形上の責任を追及することができるか。
2 Eは,Dに対し,手形上の責任を追及することができるか。
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一 小問1について
1 まず、Eは自分が形式的資格者であると主張して、Bに対し手形上の責任を追及すること(遡求)が考えられる。
手形の所持人が形式的資格者であると認められるためには、裏書の連続する手形を所持していることが必要である(手形法77条1項1号・16条2項)。
ここで、裏書の連続とは、受取人から最終の被裏書人に至るまでの各裏書が間断なく続いていることをいう。
そして、裏書の連続の有無は手形取引安全確保のため、外形的・形式的に判断すべきである。
この点、本問では、形式的・外形的に見て、裏書が間断なく続いていることから、裏書の連続が認められる。なお、第一裏書が白地式裏書であっても、裏書の連続に影響はない(手形法77条項1号・13条2項)。
2 これに対して、Bとしては、①EはBに対する権利を取得していないこと、②たとえ権利を取得しえたとしても、遡求権を失っていることを主張して、Eの請求を拒めないか。
<2頁目>
(1) ①について
Eは無権利者たるDから手形を取得しており、Bに対する手形上の権利を承継取得することはできない。
もっとも、EがDの無権利につき善意・無重過失であれば、かかる権利を善意取得できる(手形法77条1項1号・16条2項)。
(2) ②について
Eは平成14年7月1日に手形をAに支払いのために呈示しているが、A,Bとの関係では手形の満期は変造前の文言どおり平成14年5月31日であると考えられる(手形法77条1項7号・69条)。
なぜなら、変造前の手形に署名したものが、変造後の文言の責任を負う理由はないからである。
とすれば、7月1日になされたEの呈示は支払呈示期間経過後の呈示である請求呈示であり、遡求権保全効は認められない(手形法77条1項4号・53条)。
したがって、Eは遡求権を失っている。
(3) 以上より、EはBに対し手形上の責任を追及することはできない。
<3頁目>
二 小問2について
1 本小問においては、変造したDとの関係においては、満期は平成14年6月30日となる(手形法77条1項7号・69条)。
よって、7月1日になされたEの呈示は支払呈示期間内の呈示であり(手形法77条1項3号・38条1項)、遡求権保全効が認められる。
とすれば、EのDに対する責任追及が認められるとも思える。
2 もっとも、Dの前者であるBが前述のように手形上の責任を負わないことから、Dもこの影響を受けて責任を負わないのではないか。
手形行為独立の原則(77条2項・7条)が適用されるかが問題となる。
(1) 手形行為独立の原則は債務負担に関するものであるので、権利移転に関する裏書に適用されるであろうか。
思うに、手形行為独立の原則は手形取引安全を確保するための政策的なものである。
そして、裏書に担保責任が認められるのも(手形法77条1項1号・15条1項)、手形取引安全を図るためである。
<4頁目>
とすれば、裏書にも手形行為独立の原則をみとめなければ、手形取引安全という趣旨を達成しえなくなる。
よって、裏書にも手形行為独立の原則が適用されると解する。
(2) もっとも、手形行為独立の原則は前述のように手形取引安全を図るために政策的に認められるものであるから、政策的保護に値しない悪意者には適用がないと解する。
(3) したがって、本小問においてEが善意であれば手形行為独立の原則の適用があり、Dに対して手形上の責任を追及することができる。
以 上
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