購買者の関与水準とは|アサエルの消費者購買行動類型をわかりやすく解説
今回は、 購買者の関与水準 について、消費者行動論の代表的整理の一つである アサエルの分類 をもとに解説する。
消費者が商品やサービスを購入するとき、そのすべてが同じような意思決定過程をたどるわけではない。高額商品を慎重に比較して買う場合もあれば、日用品を深く考えずに買う場合もある。また、ブランドに大きな違いを感じる商品もあれば、どれも似ていると感じる商品もある。
そこでアサエルは、 購買者の関与水準 と ブランド間の知覚差異 という二つの軸から、消費者の購買行動を四つに分類した。これはマーケティングを考えるうえで非常に重要な整理である。
購買者の関与水準とは何か
購買者の関与水準とは、消費者がある商品やサービスの購入に対して、 どの程度強い関心や重要性を感じているか を示す概念である。
たとえば、価格が高い商品や失敗したくない商品、自己表現に関わる商品については、消費者は情報を集め、比較し、慎重に選ぶ傾向がある。このような場合は関与水準が高いといえる。
一方で、日常的に買う低価格の商品や、どれを選んでも大きな違いを感じにくい商品では、深く考えずに購入が行われやすい。このような場合は関与水準が低いといえる。
ブランド間の知覚差異とは何か
もう一つの軸であるブランド間の知覚差異とは、 消費者がブランドごとの違いをどの程度大きいと感じているか を意味する。
たとえば、自動車や化粧品、ファッション商品のように、ブランドごとの特徴や個性がはっきり意識される場合には、知覚差異は大きいと考えられる。
これに対して、洗剤や塩、乾電池のように、消費者から見るとどのブランドも似ていると感じられる場合には、知覚差異は小さいと整理できる。
アサエルによる四つの購買行動類型
アサエルは、 関与水準が高いか低いか 、そして ブランド間の知覚差異が大きいか小さいか によって、消費者の購買行動を四つのタイプに分類した。
それが、 複雑な購買行動型、 バラエティ・シーキング型、 不協和低減型、 習慣購買型 である。
1. 複雑な購買行動型
複雑な購買行動型は、 関与水準が高く、ブランド間の知覚差異が大きい場合 に見られる。
このタイプでは、消費者は購入を重要な意思決定だと考え、しかもブランドごとに明確な違いがあると感じているため、慎重に情報収集と比較検討を行う。そのため購買プロセスは、 「認知」→「評価」→「行動」 の順に進む。
つまり、まず商品やブランドについて知り、その後に比較・評価し、最後に購入行動へ移るのである。自動車、高級家電、住宅などは典型例といえる。
2. バラエティ・シーキング型
バラエティ・シーキング型は、 関与水準は低いが、ブランド間の知覚差異は大きい場合 に見られる。
このタイプでは、消費者は購入自体をそれほど重大に考えていないが、ブランドごとの差は感じている。そのため、特定ブランドに強く忠誠を持つよりも、 気分転換や新奇性を求めて別のブランドを試す 傾向がある。
購買プロセスは 「認知」→「行動」→「評価」 であり、まずブランドの存在や違いを知り、比較を深く行うというよりは買ってみて、その後に評価する。
菓子類、飲料、スナックなど、比較的低価格でブランド差が感じやすい商品に多く見られる。
3. 不協和低減型
不協和低減型は、 関与水準は高いが、ブランド間の知覚差異が小さい場合 に見られる。
このタイプでは、商品購入自体は重要で慎重になるが、ブランドごとの差があまり感じられないため、どれを選んでも大きくは変わらないと認識されやすい。その結果、購入後に 「本当にこれで良かったのか」という不安や不協和 が生じやすくなる。
購買行動プロセスは 「行動」→「認知」→「評価」 と整理される。すなわち、まず購入が行われ、その後に自分の選択を正当化するために情報を認知し直し、評価していく。
カーペット、家具、ある種の家電など、高額だがブランド差が分かりにくい商品が例として挙げられる。
4. 習慣購買型
習慣購買型は、 関与水準が低く、ブランド間の知覚差異も小さい場合 に見られる。
このタイプでは、消費者はその商品を重要視しておらず、しかもブランドの違いもあまり認識していない。そのため、特別な比較や評価を行うことなく、 習慣的にいつもと同じものを買う という行動が起こりやすい。
購買行動プロセスはほとんど 「行動」 のみで説明される。つまり、深い認知や比較評価を経ず、日常的な反復行動として購入がなされるのである。
日用品や低関与の消耗品などでよく見られるタイプである。
四類型を比較すると何がわかるか
この四つの類型を比較すると、消費者が商品をどれだけ重要視しているか、またブランドの違いをどれほど意識しているかによって、 意思決定の流れが大きく変わる ことがわかる。
たとえば、関与水準が高い場合は一般に慎重な判断が行われやすいが、ブランド差が大きいか小さいかによって、購入前の比較が重視されるのか、それとも購入後の不安低減が問題となるのかが変わってくる。
また、関与水準が低い場合でも、ブランド差が大きければ気軽なブランド変更が起こりやすく、差が小さければ習慣購買へとつながりやすい。このように、二つの軸を組み合わせることで、消費者行動の違いを体系的に理解できるのである。
マーケティング上の意味
アサエルの分類は、マーケティング戦略を考えるうえでも重要である。
たとえば、複雑な購買行動型の商品では、企業は消費者に十分な情報を提供し、ブランドの独自性を丁寧に訴求する必要がある。一方、習慣購買型の商品では、繰り返し接触できる広告や店頭での目立ちやすさが有効になりやすい。
また、バラエティ・シーキング型の商品では、新商品投入やパッケージの工夫が効果的であり、不協和低減型の商品では、購入後の安心感を高めるアフターサービスや保証が重要になる。
つまり、この分類は単なる理論整理にとどまらず、 商品特性に応じたマーケティング施策を考える基礎 にもなっている。
まとめ
アサエルの提唱した購買者の関与水準とブランド差異による分類では、消費者の購買行動は四つに分けられる。
複雑な購買行動型 は関与水準が高くブランド差異が大きい場合であり、購買プロセスは 認知→評価→行動 となる。
バラエティ・シーキング型 は関与水準が低くブランド差異が大きい場合であり、 認知→行動→評価 の流れをとる。
不協和低減型 は関与水準が高くブランド差異が小さい場合であり、 行動→認知→評価 と整理される。
そして 習慣購買型 は関与水準が低くブランド差異も小さい場合であり、購買行動はほぼ 行動 のみで説明される。
このように、消費者行動は商品への関心の強さとブランドの違いの認識によって大きく異なる。したがって、購買者の関与水準を理解することは、消費者行動論だけでなく、実際のマーケティング戦略を考えるうえでも重要である。

